どんな環境であれ、 自分なりの看護を していくことが大切

中途入職 10年目 B2病棟 Y.Iさん

B2病棟の紹介

B2は慢性期の男性患者様の閉鎖病棟です。閉鎖病棟とだけ聞くとネガティブなイメージを持たれることもありますが、基本的には「いろいろな患者様がいらっしゃる」病棟です。症状が強く出ている時の患者様にドキッとさせられる場面もありますが、そういうことばかりではありません。優しい言葉を患者様からかけていただくこともたくさんありますし、励まされるのも日常的です。
そんなB2の私たちは、閉鎖病棟という行動制限がある中で、患者様が最大限に主体性を持った活動をできるよう支援しています。

略歴

私は2000年から2002年まで脳外科神経内科混合病棟で勤務し、その後1年間、保健師になるための専攻科に通いました。
次に2003年4月から2005年7月まで、産業保健師として労働安全衛生に取り組んでいました。工場や配送センター、また店舗の職場巡視や健康相談を担いました。とてもおもしろい仕事でしたよ。
その頃メンタルヘルスの世界の奥深さに触れ、教科書と違うなあと思うことが多かったので、勉強のため2005年8月に精神科病院に転職して、働きながら地方公務員試験も受けました。そして受かったので埼玉県の町役場に保健師として就労しました。
役所の保健センターでは、市役所直轄の保健師として働く中で、窓口業務や対応などいろいろな人と関わりましたから、そこで覚えたことがいまの仕事に活きているなと感じます。
やがて介護保険制度が変わり、カンファレンスの際にわからないことが増えてしまっていると気づいたので、知識を蓄えるため障害福祉課に異動を希望して、役所の本庁舎に異動しました。障害福祉課で働いた後は、役所直営の地域包括支援センターに異動しました。
吉祥寺病院には2014年4月に入職し、それ以来ずっとB2病棟で働いています。2021年には主任を9ヶ月経験し、その後師長になりました。そう思うと主任の期間が短かったですね。

「東京に住みたかった」が志望動機

新潟出身なんですが、東京に住みたいと思っていたんですよね。でも神奈川と埼玉で過ごしたもののなかなか東京にたどり着けず、紆余曲折を経て念願の東京に引っ越してきました。
深大寺エリアは、東京といっても緑豊かです。この辺に住みたい、この辺で働きたいということで転職活動を行い、キャリアを活かせそうな精神科病院を探しました。
そうして条件面を調べているうちに、待遇が良さそうだなと思って入職したのが吉祥寺病院です。それから10年勤めていますね。
自転車で通勤しています。涼しい日は30分くらい徒歩で通っています。自然がきれいなだけでなく、都心にもアクセスしやすい場所ですし、神代植物園も季節ごとに素晴らしい花が咲いて気に入っています。ゆったり暮らすには非常にいいところですよ。でも最近は23区内に引っ越すという空想をしています。

オフの日は

月1回、コスチュームジュエリーの教室に通っています。
同じ先生からトールペイントも習っています。言われた通りに筆を動かすだけだから高度な技術は要らないんです。大人の塗り絵ですね(笑)。ほかにもマクラメという織物も好きで、B2病棟の入り口に花瓶を装飾したマクラメがあります。細かい作業は好きですが、家で一人でやると根気が続かないので、もっぱら教室で作業しています。
ほかにもカメラが好きで、あちこち撮り歩いていましたが、最近はたまに取り出してメンテナンスするくらいになっています。師長になって土日休みになってからすっかり引きこもり生活です(笑)。

目標

23区内、笹塚や仙川に住む空想をしています。

長い休みが取れたら

ゆっくり1週間くらい湯治をしたいですね。最近、新潟の栃尾又温泉が気に入っています。ぬるくていい湯治場ですよ。そこにこもりたいですね。
1週間続けて休みが取れることはなかなかないですが、そのうち長い休みが作れたら、遠出はせずにずっと温泉に浸かっていたいです(笑)。地獄谷の猿みたいに目を閉じて浸かるの。いい過ごし方でしょう。

吉祥寺病院のおすすめポイント

吉祥寺病院は休みが取りやすいですよ。みんなでうまく休みを取れるようにしています。
それにもともと公休が多いんです。土日祝は公休ですし、その分出勤しても振替休があります。
さらに、業務に活かせる資格取得に繋がる研修受講支援制度があり、実習指導者・認定看護師・専門看護師などを目指す人には最適の環境です。
ドクターも気のいい方が多く、うまくコミュニケーションできるので助かっています。患者様のことで相談がある時も、身軽に時間調整して病棟に来てくれますからね。それに大変な仕事の後はわざわざねぎらいの言葉をかけに来てくれることもあり、そういう時はチーム医療の仲間だなと感じます。職種の違いから来る歯がゆさを覚えることもありますが、それは医療現場ならではと思います。どんな環境であれ、自分なりの看護をしていくことが大切ですね。

Nsをやっていて嬉しいこと

退院した患者様でナイトケアを利用している方が、具合の悪かった入院中よりもだいぶ表情が豊かになり、身だしなみもきれいになって、遠くからこちらを見つけて明るく声をかけてくれたりすると、嬉しいです。「元気にしてますよ」という報告も嬉しいですし、「師長さんもがんばってね」「体に気をつけてね」なんて言ってもらうこともあって。そういう時はNsをやっていてよかったなあ、としみじみ思いますね。今日も、退院して何年も経つ方が、外来受診のついでに病棟に立ち寄ってくれました。そうやって担当していたNsに会いに来てくれる方もいらっしゃるから、こちらも楽しみにしています。

病棟で大変なこと

病状の悪い患者様からは、突然怒鳴られたり、嫌なことを言われることもあります。そんなときは仲間どうしで思いを打ち明けて消化しています。次に同じ患者様に会った時は、状況によっては「あんなこと言われて、嫌だったよ」と伝えることもあります。ただ、言うべきタイミングもあるから難しいですね。私は「伝えるのは今じゃないな」と思いつつも「もう、昨日すごく嫌だったよ!」と言っちゃったりします(笑)。

精神科医療の難しさ

「普通は」とか「常識では」といった前提で推し量れないことが多いんですよね。それらも大事な基準ではありますが、「この患者様はこうなんだな」と個別の理解を深めることが大事です。接遇にマニュアルというものはなく、一般化できないことが精神科の難しさでもあり、また醍醐味でもあると思います。みんなで知恵を出し合いながら創意工夫していくのは技術の向上に直結しますね。普通とか常識とかではない部分の判断が問われる日々の中で、「この人の中での線引はここ」「この人の助けが必要なのはここから」とか、患者さんごとのガイドラインを自分なりに構築していくのが精神科の看護だと感じます。

B2で働くポイント~同じ病名なのにみんな違う

当院の入院患者様には統合失調症の患者様が多いのですが、この疾患の大きな特徴の一つが「同じ病名でも状態は人それぞれ」なところです。症状の出方やお薬の種類もそうですし、ご本人のコンディションも、実に違います。それを理解した上で看護に当たることが求められています。
またこちらの対応ひとつ、言葉ひとつで状態に影響を強く及ぼしてしまうことも多く、その辺りは気にしていく必要がありますね。支援者のなにげないひとことで傷つけてしまうのは避けたいです。たとえば入浴介助は時間が決まっているので、どんどんこなしていかないといけませんけれど、そんなときにこちらが焦って「急いで」と言ってしまってはいけないわけです。薬を飲んでいて体がだるくて眠い中で、がんばってお風呂に入ろうとしている方に、「急いで」は傷つきますよね。ほかにも、服装を直してほしいときは「だらしないよ」ではなく「直そうね」と言ったほうがいいですよね。患者様の生活に密着している分、どうしてもタイムマネジメントが必要で、そこが難しい時に急がせてしまいたくなることもありますが、患者様それぞれの速度を待つ姿勢で看護すること。これが重要だと思います。

患者様の内訳

B2の患者様はほとんどが統合失調症で、時々、違法薬物やアルコールの依存症、認知症などを抱えた方もいらっしゃいます。統合失調症に知的障害や認知症を併発している方もいらして、そうすると対応は複雑になりますが、スタッフがご本人と協力して退院支援していきます。
お看取りも頻繁ではありませんが、あります。長く入院されている方で、加齢により身体科の重篤な疾患を併発してしまい、ターミナルケアのある施設に移る選択肢が出ても、「長く過ごして勝手のわかっている吉祥寺病院がいい」とおっしゃることが多く、そういう場合はここでできることは専門施設に比べれば少ないものの、最期までケアしていきます。

これから転職を考えている方へ

吉祥寺病院の魅力は、カンファレンスを積極的に開催している病院です。患者様の退院に向けて、病院内外から関係者が集まり、頻繁にカンファを開催しています。「この患者様を退院させたいな」という声かけから始まる、退院支援プロジェクトとでも言いましょうか。部署の垣根なく、NsもDrも、PSWもOTも栄養課も薬剤科も、一丸となって取り組める文化です。
ほかの病院に比べて圧倒的にカンファレンスの回数が多いなあと思います。私が経験した別の2病院では、ここに比べたらほとんど開催されていませんでした。今思えば、カンファが硬いイメージだったのかな。ここでは「患者様を幸せな退院生活に結びつけるための作戦会議」として、いろんな職種のいろんな年代の人が額を突き合わせて知恵を持ち寄ります。それがこの病院のすごいところと言えます。
職種を越えた話し合いができるのは非常に魅力的です。病棟の枠組みを越えて、みんなで一緒に、患者さんをよくしようという意志に溢れています。Nsとして働く環境をほかと比べたとき、そのエネルギーは圧倒的に魅力的です。私は当初、まあ、5年位で辞めようかなくらいの気持ちで入りましたが、すでに10年になろうとしています(笑)。

精神疾患かも知れない家族が医療に繋がるために

私が以前保健センターに勤めていた時は、「家族の様子が少しおかしい」と相談を受けることがありました。
高齢者であれば地域包括支援センターにご家族が相談に行っていただければと思います。
私が地域包括支援センターにいた時は、直営を活かして介護予防教室のチラシを配りながら訪問して様子を見たり、受診に繋げたりすることができていました。そういう活動ができる地域と難しい地域があるので、受け身になっているとなかなか医療に繋がれないことがあるのはもどかしいですね。若い方なら保健センターが担当していますが、65歳以上であれば統合失調症と認知症のどちらか判別がつきかねることもありますので、早期に地域包括支援センターに相談してほしいです。
地方は民生委員が訪問を担っている自治体もあるのですが、東京は人口も多く、難しい側面があります。地域の使える仕組みやサービスはなんでも使って、まず受診に繋がることができるといいなと思っています。どこに相談したらいいかわからないという場合はとにかく発信して、声を拾ってもらってほしいものです。

(余談/まめちしき)

精神疾患・障害のある方は一般科に受け入れられにくいという側面があり、身体科に転院を希望しても受け入れてもらえないケースが少なくありません。輸血ひとつ取っても、ご本人やご家族の理解や同意を得られず、移送先から戻されて、助かるはずのところを助けられずに苦い思いをすることがあります。